5月3日、午前11時。開会式の花火の合図とともに、参加170か町の凧がいっせいに揚げられ、空は凧一色で埋め尽くされます。続いて、激闘を鼓舞するラッパの音とともに数百人が入り乱れての凧揚げ合戦が始まります。太さ5ミリの麻糸を互いに絡ませ、摩擦によって相手方の糸を切ることから「ケンカ凧」とも呼ばれます。糸と糸がこすれ合う焦げた臭いと砂埃が立ち昇ると、会場は熱気と興奮に包まれます。浜松っ子の心意気が真正面から激しくぶつかり合う、これが伝統の凧揚げ合戦なのです。

毎年5月3、4、5日に開催される浜松まつりは、100万人以上の観光客が訪れる日本有数のまつりとして知られています。昼間は中田島砂丘で勇壮な凧揚げ合戦、夜は中心市街地で絢爛豪華な御殿屋台が引き回されるほか、郷土芸能や吹奏楽パレード、ミス浜松まつりコンテストなど、3日間楽しめるイベントが盛り沢山。まつり期間中は町中が熱気と興奮に包まれます。町民の声によって生まれた浜松まつりには、現在、市内170か町が参加、老若男女を問わず誰でも参加できる市民のまつりとして発展し続けています。

初凧とは、長男の誕生を祝い、その成長を願って、町の若衆と親子がいっしょになって空高く揚げる大凧のこと。家紋と赤ん坊(初子)の名前を書き入れた凧を揚げるこの風習は、今からおよそ440年前の永禄年間、引間城主が長男誕生を祝って凧を揚げたことに由来しています。「遠州のからっ風」と呼ばれる強い風が吹くこの地は気候的にも凧揚げに最適で、凧が高く揚がれば揚がるほど、初子が健やかに成長すると言われています。

夜、御殿屋台の引き回しが終わると、若衆たちは町内の初家(初子宅)に集まり、初子の誕生と成長を祝って激練り(初練り)を繰り広げます。練りの迫力とラッパの音の大きさに、思わず泣き出してしまう初子も。万歳三唱の後、初家は祝ってもらったお礼に、若衆連に料理と酒を振る舞います。

凧の大きさは2帖~10帖まで。初
凧は4帖(1辺2.4m)が主流で、
凧揚げ合戦には4帖と6帖(1辺
2.9m)が適しています。

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